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二段重「水色の校舎」のお届け

こんにちわ。
大変お待たせいたしました。
ペンギンの学校「水色の校舎」を
明日28日(日)着で配送する準備が整いました。

正直、無事にお渡しが出来て、ほっとしております。

今回の二段重では絵付けに苦労しました。
現在、陶磁器の絵付けといえば一般業務用のものが全体を占めています。

絵付け屋さんは絵柄が印刷してある薄い膜を手で貼っていくのですが
一般業務用のものは、だいたいの見当で生地に次々と手早に貼ってゆきます。

それが、さかざき展における陶磁器は
デザイン優先で仕上がりに妥協しないところから
今の陶磁器業界の貼り屋さんたちの中に、貼れる技術の人がほとんどいません。
熟練の技術者といえども
特に二段重のようなデザインに細かい仕様(貼り位置の注文)があるものは
生地にあらかじめ貼る位置の印をつけ、伸ばさないように貼り、
貼った位置をスケールを使って確かめなければ仕上がらないのですが
そういう感覚は業務用を大量にさばく仕事しかしない中で
消されてしまっています。
大量にこなす感覚は発達しても、
デザインを考えながら貼る感覚は失せています。

夏のさかざき展の初日3日前、
焼きあがって箱に入っていた二段重の納品を全て止め、出品を見送りました。
理由は外側の窓の仕様が、指定の仕様と異なっていたからです。
1階と2階の窓の垂直線をすべて合わせるという指定に
添って仕上がっていなかったからです。ずれていたところが
一蝶の妥協をしない姿勢からNGを出しました。
あれほど注意を促していた箇所が、守られていなかったところは
全てが出来あがって販売を待つべく箱に入った状態で置かれていても
初日を控えて予定通り出品、販売しなければならない状態にあっても
そこのところはどうしても妥協ができませんでした。

その後も、説明してもわかってもらえない絵付け業者や職人さん達と
何度もやりなおしを繰り返し、かつ職人さんも何人も変えました。

岐阜に赴き、彼らに説明もしに行きました。

やり直しの中で、多くの二段重の生地と
イラストの絵付けの紙(膜)が消えていき
多くの労力と時間がかかっていきました。
それでも、デザインでの妥協はできませんでした。

あきらめず、やれるだけのことはやりました。
お届けするものがマックスのレベルです。

こんな細かい仕事は出来ないと小言をいった職人さんもいました。
そんな思うようにしたいのなら自分で貼ればいいじゃないか、と
頼んだ途中で仕事を放り出す職人さんもいました。
細かいことを言えば誰もやるひとなんかいないという業者もいました。

そういう言葉を聞くたびに
彼らは何か間違っている、と思いました。

仕事というのは
“人の喜びに仕える”ことだと私は思っています。
仕事をやることで
お金という対価と換えることにはなります。
しかし仕事というものは
お金に仕えることではなく
“人の喜びに仕える”ことだと私は思っています。

そしてこの二段重を受け取る人たちが
どんなにこれを愛していくかということも
考え及ぶことをせず

彼らの局部的なもののみかたに
うちひしがれ、孤立しましたが

私は、かつては日本が世界に誇った窯業界の誇りを
皆に残しておきたいという信念を曲げることはありませんでした。

日本人として、残せる今、残しておきたい。

そして
仕上がりを今か今かと楽しみにしながら
黙って信じて待っていてくださったペンギンファンの皆さんのために

残してあげたい・・・。

皆さんが陶磁器を愛してくれるように。
日本の物づくりを大切に思い、後世に伝えてくれるように。
日本で作られた美しいものに触れ
日本人の美意識と誇りを感じてもらえるように。・・・
そしてまた、私たちは長い人類の歴史の中で、ほんのわずか偶然共にいたのだとしても
その偶然を精いっぱい大事に考えたい。

さて、最後になりますが

日本の窯業界は斜陽をたどっています。
暮れゆく夕日の軌道はもう変えることは出来ませんが
暮れゆく中に美しく輝くことは出来るはずです。
そして美しさは、いつまでも心に残ります。

今の窯業界の方々は厳しい状況ですが
携わっている以上、自分の仕事に誇りを持って
今だからこそ、陶磁器を選んでくれる人たちを
大切に考え、輝くことを忘れずにいて欲しいということも
私は願っています。


陶磁器は容易な世界ではありません。
制作工程が多く、分業で
人の手がかかります。
生地にしても絵付けにしても
季節や温度の変化にも影響を受ける生ものです。

このあたりの話をすると長くなりますので
また機会がありましたら・・・。


それではまた。
少し秋めいてきましたね。
気温の変化にとまどう日々ですが
どうぞ皆さん身体には気を付けて

次は11月と12月のさかざき展ですね。
皆さんとお元気な姿に会えることを励みに、
私も身体に気を付けます。

                一蝶

付記

有隣堂アトレ恵比寿店のスタッフの皆さん、どうもありがとう。
一蝶の姿勢を黙って受け取り、ファンの方々へ対応をしていただき
一蝶を信じ、発送の日まで心を合わせてくれて、どうもありがとう。
プロフィール

一蝶さん

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さかざきちはる展のことや季節の話題等をお伝えしています。どうぞよろしくお願いします。

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